PNEUMONIA CARE & PREVENTION
肺炎の予防と治療
ワクチンで備える。
症状が出たら、早めに相談。
2026年9月10日作成
肺炎は、細菌やウイルスなどによって肺に炎症が起きる病気です。抗菌薬などによる治療に加え、かかる前の予防と、悪化のサインに早く気づくことが大切です。ここでは、主に成人の市中肺炎(日常生活の中でかかる肺炎)についてご案内します。
肺炎は、かかる前の備えが大切です
当院では、肺炎球菌・インフルエンザ・新型コロナの予防接種を行っています。それぞれ予防する感染症が異なるため、年齢や持病、接種歴に合わせて備えます。ワクチンですべての肺炎を防げるわけではありませんが、対象となる感染症の発症や重症化を減らすために役立ちます。
肺炎球菌ワクチン――以前に接種した方もご相談ください
肺炎球菌は、肺炎のほか、血液や髄膜に感染して重い病気を起こすことがある細菌です。高齢の方、心臓・肺・腎臓の病気や糖尿病がある方、免疫を抑える治療を受けている方などは、接種についてご相談ください。
| ワクチン | 特徴と選び方 |
|---|---|
| プレベナー20(PCV20) | 20種類の血清型を対象とする結合型ワクチンです。2026年度から高齢者の定期接種に使用されます。当院では定期接種の対象となる方に使用します。 |
| キャップバックス(PCV21) | 成人の肺炎球菌感染症で問題となる21種類の血清型を対象とする結合型ワクチンです。プレベナー20とは対象が一部異なり、当院では自費接種の選択肢としてご案内します。 |
「21価」は「20価のすべてに1種類を追加した」という意味ではありません。2つは重なる血清型と、それぞれ独自に対象とする血清型があります。
定期接種は、原則65歳の方、または60〜64歳で一定の障害がある方が対象です。過去の接種歴によって扱いが異なります。助成の対象や費用は、お住まいの自治体の案内も確認します。
MSD:キャップバックスの接種を受ける方へのガイド(PDF)
インフルエンザワクチン
インフルエンザでは、ウイルスによる肺炎や、続いて細菌が感染する肺炎が起きることがあります。ワクチンは発症を減らし、重症化を防ぐための備えになります。流行するウイルスや免疫の変化に合わせ、毎年の接種を検討します。
インフルエンザワクチンの種類と特徴
- 通常量の不活化ワクチン(注射):ウイルスの感染力をなくした成分を使う、国内で広く用いられているタイプです。接種年齢により量や回数が異なります。
- フルミスト(点鼻):弱毒化した生きたウイルスを鼻に噴霧します。国内の対象は2歳以上19歳未満で、高齢者向けの選択肢ではありません。妊娠中や明らかな免疫機能異常がある方などには使用できません。
- 高用量ワクチン(エフルエルダ):高齢者の免疫応答を高める目的で抗原量を増やしたワクチンです。ただし発売時期が変更され、2026/27シーズンには国内で供給されない予定です。現時点の接種可能な選択肢としてはご案内していません。
新型コロナワクチン
新型コロナでも肺炎や呼吸不全が起こることがあります。特に高齢の方や持病のある方では、入院や死亡などの重症化を減らすことが接種の大切な目的です。接種時には、そのシーズンの製剤、年齢、前回の接種時期などを確認します。
新型コロナワクチンの種類と特徴
国内の主なワクチンについて、免疫のつけ方の違いを説明します。対象年齢・対応株・供給状況は製剤やシーズンで異なります。この一覧は、当院がすべてを在庫しているという意味ではありません。
コミナティ(ファイザー)
ウイルス表面のスパイクタンパク質を作るための「設計図」であるmRNAを届けるワクチンです。体が一時的に作ったタンパク質を目印に、免疫が備えます。
エムネクスパイク(モデルナ)
スパイクタンパク質のうち、免疫の標的になる部分に絞った設計のmRNAワクチンです。従来の成人用スパイクバックスより少ないmRNA量を使います。量が少ないことだけで、副反応の少なさや効果の優劣が決まるわけではありません。
ダイチロナ(第一三共)
日本で開発・生産されたmRNAワクチンです。ウイルスが人の細胞に結びつく部分「RBD」を標的にしています。国内の臨床試験で免疫応答や安全性が評価されています。
ヌバキソビッド(武田薬品)
ウイルスのタンパク質そのものを成分として接種する「組換えタンパクワクチン」です。免疫の働きを助ける成分(アジュバント)も含みます。mRNAを用いない方式です。
コスタイベ(Meiji Seika ファルマ)
細胞の中でmRNAが一時的に増える仕組みを使う「自己増幅型mRNAワクチン」です。レプリコンワクチンとも呼ばれます。感染性のある新型コロナウイルスを作る仕組みではありません。
接種後には、接種部位の痛み、発熱、だるさなどがみられることがあります。まれな重いアレルギー反応などについても確認します。接種後の胸の痛み、息切れ、動悸などは早めに医療機関へご相談ください。
接種のご相談には、接種済証・接種記録とお薬手帳をお持ちください。実施する製剤、接種時期、公費助成、費用は予約時にも確認します。
ワクチンと一緒に、日常の予防も
手洗い、換気、体調に応じたマスクの使用に加え、禁煙、歯みがきや義歯の手入れなどのお口のケアも大切です。食事でむせる方は、飲み込みの状態も確認します。
肺炎を疑う症状と検査
発熱、咳、痰、息苦しさ、胸の痛みなどが手がかりです。高齢の方では、高い熱がなくても、食欲低下、元気がない、ぼんやりする、といった変化で見つかることがあります。
診察では体温、呼吸、酸素の値、血圧などを確認し、必要に応じて胸部レントゲンや血液検査を行います。レントゲンだけでははっきりしない場合や、別の病気・合併症が疑われる場合には、CTなどを検討します。
外来で治療できるのは、どのようなときですか?
外来治療では、呼吸や血圧が安定し、意識がはっきりしていて、水分・食事・飲み薬を取れることが大切です。持病の状態、自宅で支えてくれる方がいるか、悪化したときに再受診できるかも確認します。
酸素が不足している、血圧が低い、意識がおかしい、強い脱水があるなどの場合には、入院での治療を検討します。
原因と体の状態に合わせて治療します
外来で治療できる肺炎では、原因となる細菌を初診時には特定できないことがあります。その場合は、一般的な細菌とマイコプラズマなどの両方に対応する、ラスクフロキサシンなどの抗菌薬を、体の状態に合わせて選びます。治療開始後も症状の改善を確認します。
息苦しさが強い場合や全身状態が悪い場合には、入院治療ができる医療機関へご紹介します。
ウイルス性肺炎そのものに抗菌薬は効きません。インフルエンザや新型コロナでは、発症からの時間や重症化リスクに応じて抗ウイルス薬を検討し、細菌感染を伴う場合には抗菌薬も使用します。
成人肺炎診療ガイドライン2024:外来治療の薬剤例(p.35–38)
治療を始めたあとも、経過を確認します
熱だけでなく、息苦しさ、水分・食事の量、全身の状態を確認します。改善が乏しい場合は、薬が効きにくい菌、別の病気や合併症がないかを再評価します。再診時期は診察時にご案内します。悪化した場合は、予約日を待たずにご連絡ください。
参考資料
- 日本呼吸器学会:成人肺炎診療ガイドライン2024
- 日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 第8版
- 厚生労働省:インフルエンザワクチン
- 厚生労働省:新型コロナワクチンQ&A
2026年9月10日時点の資料をもとに作成しています。治療は成人肺炎診療ガイドライン2024を中心とし、その後のワクチンの承認・接種方針は新しい学会資料・公的資料で補っています。