にしもと内科・泌尿器科・人工透析内科

DYSLIPIDEMIA CARE

当院における脂質異常症の治療

LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール。それぞれの検査結果と体の状態を確認し、一人ひとりに合った治療を行います。

監修:西本 紘嗣郎(院長)

2026年9月29日更新

LDL-C・中性脂肪(TG)・HDL-Cの検査票を虫眼鏡で確認するぴーちゃん。「ふむふむ…」

01

脂質異常症とは

脂質異常症は、血液中の脂質の値に異常がある状態です。主に次の3つがあります。

  • LDL(悪玉)コレステロールが高い:高LDLコレステロール血症
  • 中性脂肪(TG)が高い:高トリグリセライド血症
  • HDL(善玉)コレステロールが低い:低HDLコレステロール血症

自覚症状が少なくても、動脈硬化が進むことがあります。食事や運動だけでなく、体質・遺伝、糖尿病や甲状腺の病気、服用中の薬などが関係する場合もあります。

健診で異常を指摘されたら、症状がなくても検査結果をご相談ください。どの脂質に異常があるかによって、治療で重視する点が異なります。

出典:ガイドライン2022 p.22、ガイドライン2022 p.173

02

LDLコレステロールが高い方の治療

LDLコレステロールが高い状態が続くと、動脈硬化が進みやすくなります。治療の目的は、心筋梗塞などの冠動脈疾患や、動脈硬化による脳梗塞を防ぐことです。

一次予防と二次予防

一次予防は、これらの病気をまだ起こしていない方が、初めての発症を防ぐために行う治療です。

二次予防は、心筋梗塞・狭心症などの冠動脈疾患や、アテローム血栓性脳梗塞など動脈硬化による脳梗塞を経験した方の、再発を防ぐための治療です。再発の危険が高いため、より厳格なLDLコレステロールの管理が必要になります。

目標値と治療は、一人ひとりに合わせます

同じLDLコレステロール値でも、年齢、血圧、喫煙、糖尿病・腎臓病の有無、これまでの病歴によって、目標値や必要な治療は変わります。

肉の脂身やバターなどのとりすぎを見直し、魚・大豆製品・野菜などを取り入れた食事、無理のない運動、禁煙、適正な体重の維持を基本にします。必要に応じて、LDLコレステロールを下げる薬を組み合わせます。

出典:ガイドライン2022 pp.68–71、ガイドライン2022 pp.101–102、ガイドライン2022 pp.119–123

一次予防で使う久山町スコア

久山町スコアは、対象となる方の一次予防で、今後10年間に冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞を起こす可能性を見積もる方法です。40~79歳の対象となる方について、年齢、性別、血圧、糖代謝、LDL・HDLコレステロール、喫煙などを確認します。二次予防の再発リスクを計算するものではありません。

一次予防でも、糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・末梢動脈疾患(PAD)がある方は、スコアによらず高リスクとして扱います。家族性高コレステロール血症(FH)などは別の基準で管理します。

出典:ガイドライン2022 pp.68–71

当院での評価とご説明

当院では病歴と合併症を確認し、久山町スコアの対象となる方はその結果も参考にして、管理目標と治療を相談します。評価結果や治療の進め方は、A4で印刷できるレポートにまとめて説明します。

治療開始前の初回リスク評価を大切にし、治療中も検査結果を確認します。治療によって数値が改善したことだけで判断せず、治療前の状態や病歴も踏まえて治療を調整します。

レポートは、ガイドラインに基づいて当院が作成した診療支援ツールです。日本動脈硬化学会の公式アプリではなく、AIによる診断や治療の自動決定を行うものでもありません。医師が個別に判断します。

03

中性脂肪が高い方の治療

中性脂肪は体のエネルギー源となる脂質ですが、高い状態が続く場合は、生活習慣や背景にある病気を確認することが大切です。

食事の影響と、数値が上がる原因を確認します

中性脂肪は食事の影響を受けるため、空腹時の採血か、食後の採血かを確認して判断します。必要に応じて、条件を揃えた再検査を行います。

食べすぎ、飲酒、体重増加、糖尿病、甲状腺の病気、薬の影響などを確認します。中性脂肪の値だけでなく、LDLコレステロールや血糖値なども合わせて評価します。

出典:ガイドライン2022 p.22、ガイドライン2022 p.173

生活習慣を見直し、必要に応じて薬を使います

  • 食事全体の量を見直し、甘い飲み物・お菓子・主食などのとりすぎを控えます。
  • 飲酒量を見直し、状態に応じて減酒・禁酒に取り組みます。
  • 無理のない運動を続け、体重が多い方は減量に取り組みます。

中性脂肪が著しく高い場合は、当院で原因を調べ、患者さんの状態に合わせて治療を行います。食事・飲酒などの生活習慣の見直しに加え、必要に応じて薬による治療を行います。

出典:ガイドライン2022 pp.79–80、ガイドライン2022 pp.101–102、ガイドライン2022 pp.119–123

04

HDLコレステロールが低い方へ

HDLコレステロールが低い場合も、生活習慣やほかの検査値を確認します。運動、禁煙、体重の管理などに取り組み、LDLコレステロールや中性脂肪も合わせて管理します。

HDLコレステロールの数値だけを薬で上げることを目標にするのではなく、動脈硬化の危険性を総合的に評価します。

出典:ガイドライン2022 pp.71–72、ガイドライン2022 pp.101–102

05

治療を始めた後も、定期的に確認します

検査結果や体調を確認し、治療の効果、副作用、薬の飲み合わせなどを見ながら、治療を調整します。検査や受診の間隔は、患者さんの状態と使用している薬に合わせて決めます。

数値が改善しても、自己判断で薬を中止せず、ご相談ください。健診結果やお薬手帳、過去の検査結果があれば、受診時にお持ちください。

出典:ガイドライン2022 p.127

06

よくある質問

健診で異常があれば、すぐに薬が必要ですか?

必ずしもそうではありません。どの脂質にどの程度の異常があるか、これまでの病気、年齢や生活習慣などを確認し、生活習慣の見直しと薬の必要性を個別に判断します。

久山町スコアは、中性脂肪の治療にも使いますか?

久山町スコアは、対象となる方の一次予防で、将来の動脈硬化性疾患の発症リスクを見積もるために使います。中性脂肪の値そのものは計算項目ではなく、中性脂肪の治療は採血時の食事の条件、数値、原因や合併症なども確認して判断します。

治療で数値が下がったら、薬をやめられますか?

数値の改善には薬の効果が含まれることがあります。自己判断で中止せず、治療前の数値や病歴、現在の状態を確認しながら、継続や調整についてご相談ください。

07

参考文献

日本動脈硬化学会 編.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.日本動脈硬化学会,2022.

以下は冊子に印刷されたページ番号です。リンクから公開PDFの該当ページを開けます(PDFの表示番号は冊子より2ページ後になります)。

ガイドライン公式ページ・正誤表

CONSULTATION

健診で脂質の異常を指摘された方へ

LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロールを一緒に確認し、患者さんに合った治療を相談します。