HIGH PSA
PSAが高いと言われた方へ
前立腺がんの検査と、数字の読み方
監修:西本 紘嗣郎(院長・日本泌尿器科学会 専門医・指導医)
2026年9月9日更新
健診結果に「PSA高値」「要精密検査」と書かれていると、前立腺がんではないかと心配になると思います。
PSAは、前立腺がんを見つけるための大切な手がかりです。ただし、前立腺肥大症や炎症でも高くなるため、血液検査の数字だけでは診断できません。今回の値に加え、過去からの変化、前立腺の大きさ、診察や画像検査の結果を合わせて考えます。
PSAは、もともと正常な前立腺でもつくられています
PSAは「前立腺特異抗原」というたんぱく質です。前立腺の細胞でつくられ、多くは精液に分泌されますが、一部は血液中にも入ります。
「がんのマーカー」と聞くと、がんがあるときだけ出てくる物質のように感じるかもしれません。実際には、正常な前立腺でもPSAはつくられています。
前立腺が大きくなる前立腺肥大症や、前立腺に炎症が起きる前立腺炎でも、血液中のPSAが増えることがあります。PSAが高いという結果は、前立腺の状態を詳しく確認するきっかけになります。
「4」を超えたらがん、というわけではありません
PSAは一般的に4.0 ng/mLを目安に評価しますが、年齢によって、これより低い基準を用いる場合もあります。
この基準値は、がんの有無をきっぱり分ける境界線ではありません。基準値を超えていてもがんが見つからないことがあり、反対に、基準値以下でもがんが見つかることがあります。
値が高いほど前立腺がんの可能性は高まりますが、「少し超えただけだから大丈夫」「高いから間違いなくがん」と、ご自身で結論を出さずにご相談ください。
同じPSA「6」でも、判断が違うのはなぜでしょう
前立腺の大きさが違うと、同じPSA値でも意味合いが変わります。
例えば、次の2人を考えてみましょう。説明のための架空の例です。
| 項目 | Aさん | Bさん |
|---|---|---|
| PSA値 | 6.0 ng/mL | 6.0 ng/mL |
| 前立腺の大きさ | 60 mL | 30 mL |
| PSA密度 (PSA値÷前立腺の大きさ) | 0.10 | 0.20 |
前立腺が大きい方では、それに伴ってPSAが高くなっている可能性があります。一方、前立腺が比較的小さいのにPSAが高ければ、その理由をより慎重に調べます。
この「前立腺の大きさに対して、PSAがどのくらい高いか」を表す数値が、PSA密度です。MRIなどの結果と組み合わせて、生検が必要か考える際の参考にします。
もちろん、この例だけでAさんにがんがない、Bさんにがんがあるとは判断できません。
一度の結果に加えて、変化も確認します(PSA速度)
PSAは、今回の数値に加えて、過去からの変化も確認します。一定の期間にPSAがどのくらい上昇したかを表す指標を、「PSA速度(PSA velocity)」といいます。
以前から同じくらいの値なのか、最近になって上昇しているのかを知るために、昨年、一昨年の健診結果も大切な情報になります。ただし、炎症や射精、強い運動などで一時的に高くなることもあるため、必要に応じて再検査を行います。
院長の西本は、PSA速度とMRI・生検の結果から前立腺がんの広がりを評価する研究を、2008年に筆頭著者として報告しました。院長が初めて執筆した英語の原著論文です。 PSAの変化を研究してきた経験を、日々の診療に生かしています。
西本らの研究論文/International Journal of Urology, 2008(英語)
診療では、PSAの上昇の速さだけで判断せず、前立腺の大きさや画像検査なども合わせて、詳しい検査が必要かを考えます。
また、前立腺肥大症や男性型脱毛症に使われるフィナステリド、デュタステリドなどには、PSAを低下させる作用があります。服用している薬は、検査結果を読む際に必要な情報です。自己判断で中止せず、お薬手帳などでお知らせください。
MRIと生検では、分かることが違います
MRIでは、前立腺の中にがんを疑う場所があるか、その場所や広がりを画像で調べます。疑わしい場所が分かれば、その部分を狙って組織を採る「標的生検」に役立ちます。
ただし、MRIに明らかな異常がなくても、がんの可能性を完全には否定できません。PSA密度や診察所見、ご家族の病歴などから疑いが残る場合は、生検を検討します。
米国泌尿器科学会:前立腺生検を検討する際のガイドライン(英語)
生検は、細い針で前立腺の組織を少量ずつ採り、顕微鏡で調べる検査です。がん細胞の有無に加え、がんが見つかった場合には、その性質を判断する情報も得られます。
出血や感染などの負担もあるため、検査で得られる情報と体への負担を考え、必要性を相談します。また、一度の生検でがんが見つからなかった場合も、その後のPSAの経過などに応じて、再評価が必要になることがあります。
がんが見つかったら、すぐに手術なのでしょうか
前立腺がんには、進行がゆっくりなものもあれば、早めの治療が必要なものもあります。治療方針は、がんの広がりや組織の性質、年齢、体の状態、ご本人の希望などを合わせて決めます。
進行する危険が低いと判断された場合には、すぐに手術や放射線治療を始めず、定期的な検査で変化を確認する「監視療法」を選べることがあります。
監視療法では、PSAやMRI、必要な生検などを計画的に行い、治療を始めるべき変化がないか確認します。治療の必要性を見極めながら、排尿や性機能など、生活への影響も考えて方針を相談します。
受診の際は、以前の健診結果もお持ちください
当院では、今回と過去のPSA値、排尿の症状、服薬内容などを確認し、必要に応じて再検査や尿検査、超音波検査などを行います。MRIや前立腺生検が必要な場合は、検査を行う医療機関と連携します。
受診の際は、次のものをご持参ください。
- 今回の健診・人間ドックの結果
- 過去のPSA値が分かる検査結果
- お薬手帳
- 紹介状や画像データ(お持ちの場合)
前立腺がんになったご家族がいる場合や、最近、発熱・排尿時の痛みなどがあった場合もお知らせください。
「この値をどう考えればよいか」「次にどの検査が必要か」。検査結果を一緒に確認しながら、ご説明します。